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監査に対する世間の誤解と真実

東芝の粉飾決算がニュースになった際に、監査法人が実施した監査が適切だったか否かが新聞などでも取沙汰されました。

ただ監査法人や、専門家から監査を見た場合と、世間一般から監査を見た場合には、監査に対する解釈について、両者間に溝(ギャップ)があります。このギャップについて簡単に説明します。

そもそも監査とはなにか?

まず、そもそも監査とは何かということが問題になります。

監査法人側等と世間一般との間で「監査」に対する理解が異なれば、両者間で監査の結果に対する解釈も異なることになります。

(財務諸表)監査について、噛み砕いて説明すると、監査とは財務諸表が全体として適正に表示されているか否かを確認して、確認した結果を「適正意見」や、「不適正意見」等として表明することと言うことができます。

この財務諸表が全体として適正に表示されているとは、財務諸表に計上されている項目(売上高や、利益など)が1円たりとも実際の金額と違ってはいないということではありません。

ここがミソであって、世間一般が最も誤解しやすいところだと思います。

例えば、トヨタ自動車の実際の売上高が20兆円で、財務諸表に計上されている売上高は20兆1円だとします。このように実際の売上高と財務諸表に計上されている売上高に差異がある場合でも、「財務諸表は全体として適正」という意見になります(※)。

※ 1円の差異が重要な原因に基づいている場合には、適正意見がでないことも(理論上は)ありえます。

話を元に戻しますが、監査および監査を実施した後に表明される適正意見とは、財務諸表に計上されている金額が1円たりとも事実と異なっていないということを意味しているのではないということです。

この点が世間一般の誤解の多いところであって、注意すべき点です。

職業紹介、労働者派遣事業の申請に際して添付する監査証明も同様のことが言えます。

職業紹介・労働者派遣事業の許可申請においては、監査証明書を添付しますが、この監査証明が適正意見だとしても、申請会社の財務諸表(貸借対照表等)が1円たりとも事実と異なっていないということを証明しているわけではないことは理解しておくべきでしょう。

※ 改めて言うことでもありませんが、職業紹介・労働者派遣事業の許可申請において監査証明が不適正意見だった場合には、資産基準を満たしているか否か厚労省側で確認できませんので、事業開始の許可がおりることはありえません。