人材紹介や、人材派遣事業の許可申請においては、監査証明書の添付が必要になることがあります。
人材紹介等の許可申請の際には、会社が一定水準以上の資産を保有していなければならないとされており(資産要件)、この資産要件を満たしていることを証明するために監査証明書の添付が求められることがあります。※
※ 直近の決算で資産要件を満たしている場合には監査証明書の添付は不要
新規に労働者派遣事業を開始する場合の資産要件
・基準資産額:2,000万円以上
・現金預金額:1,500万円以上
・基準資産額が負債総額の1/7以上
新規に職業紹介事業を開始する場合の資産要件
・基準資産額:500万円以上
・現金預金額:150万円以上
人材紹介や派遣事業の許可申請に際して、監査証明書の添付をせず申請してしまい、労働局側から申請書等の差し戻しになるケースがあります。
今回は、監査証明書と関連して、人材紹介の新規登録・更新手続きにおいて誰が監査証明を発行できるのかについて説明します。
そもそも監査証明を発行できる人(または法人)は法律で限定されていますし、状況によっては監査できない人もいます。
人材紹介・人材派遣事業の監査証明を発行してはいけない人は?
まず、そもそも監査業務が出来る者というのは、法律で決まっています。
具体的に言うと、公認会計士または監査法人だけが監査業務を実施し、監査証明書を発行できることになっています。
逆に言うと、公認会計士、監査法人以外は監査業務を実施できず、したがって、監査証明もできないことになります。
ただ公認会計士等であれば、誰でも監査ができるわけではありません。
例えば、公認会計士資格を保有する顧問税理士は監査証明はできません。
公認会計士・税理士として会社の税務顧問をしている方々が多くいらっしゃいますが、自身の税務顧問先の監査はできないということです。
公認会計士でもある顧問税理士が監査を実施できない理由は、監査対象会社から継続的な報酬を得ている(例えば、税務顧問料)者が監査をすれば、公平・公正な立場から監査業務を実施できないからです。
顧問税理士以外でも、例えば、①公認会計士の配偶者が、監査対象会社等の使用人(従業員など)である場合又は過去一年以内にその使用人であった場合や、②公認会計士又はその配偶者が、監査対象会社等の株主、出資者、債権者又は債務者である場合なども、監査はできないことになっています。
監査対象会社と著しい利害関係があれば、公平・公正な立場から監査ができないからです。
監査証明書を発行できない者の具体例 |
顧問税理士(公認会計士ではないため) |
公認会計士でもある貴社の顧問税理士(公平・公正性に欠けるため) |
コンサルティングを依頼している公認会計士(公平・公正性に欠けるため) |
貴社の役員または社員である公認会計士(公平・公正性に欠けるため) |
公認会計士合格者(公認会計士ではないため) |
コンサルタント(公認会計士ではないため) |
弁護士(公認会計士ではないため) |
行政書士(公認会計士ではないため) |
中小企業診断士(公認会計士ではないため) |
司法書士(公認会計士ではないため) |
まとめ 人材業で監査証明できない者
最後に、監査証明業務ができない者、監査証明を発行できない者についてまとめてみます。
人材紹介・人材派遣事業の許可申請において監査証明できない者は以下の通り
・顧問税理士、税理士
・公認会計士の資格を有する顧問税理士
・監査対象会社と著しい利害関係のある人 etc
参考として、利害関係のある者は監査してはいけない旨を規定する条文を掲載しますので、ご興味のある方や、確認したい方はご参照ください。
参考
公認会計士法
第二十四条 公認会計士は、財務書類のうち、次の各号の一に該当するものについては、第二条第一項の業務(監査証明業務)を行なつてはならない。
一 公認会計士又はその配偶者が、役員、これに準ずるもの若しくは財務に関する事務の責任ある担当者であり、又は過去一年以内にこれらの者であつた会社その他の者の財務書類
二 公認会計士がその使用人であり、又は過去一年以内に使用人であつた会社その他の者の財務書類
三 前二号に定めるもののほか、公認会計士が著しい利害関係を有する会社その他の者の財務書類
2 前項第三号の著しい利害関係とは、公認会計士又はその配偶者が会社その他の者との間にその者の営業、経理その他に関して有する関係で、公認会計士の行なう第二条第一項の業務の公正を確保するため業務の制限をすることが必要かつ適当であるとして政令で定めるものをいう。
3 国家公務員若しくは地方公務員又はこれらの職にあつた者は、その在職中又は退職後二年間は、その在職し、又は退職前二年間に在職していた職と職務上密接な関係にある営利企業の財務について、第二条第一項の業務を行つてはならない。