人材紹介の手数料は、紹介した人材の年収の約30%と言われています。例えば、年収1,000万円の人材を紹介すると、紹介会社には300万円の手数料(売上)が入りますし、年収2,000万円の人材を紹介すると手数料として600万を得ることができます。
人材紹介ビジネスは、ある意味で「旨み」のあるビジネスと考えることができますし、年収の高いビジネスマンをターゲットとした人材紹介会社があることも事実です。
紹介という同じ仕事をするならば、年収の高いビジネスマンをターゲットにした方が、紹介会社の利益率は高くなるわけです。
いずれにしても人材紹介事業は旨みのあるビジネスとも考えられますので、新たに人材紹介業を開始しようとする会社があることも事実です。
ただ人材紹介事業をしようとしても、すぐに開始できるわけではありません。人材紹介事業を開始するためには、厚生労働省の許可が必要です。
そこでこの記事では人材紹介事業を開始するために必要な許可の申請手続きや監査証明等についてお伝えします。
人材紹介業(職業紹介業)の許可申請をするときの流れ
最初に、人材紹介事業を開始するにあたっての全体的な流れを確認します。人材紹介事業を開始するにあたっての流れは、概ね次のようなフローになります。
まずは全体の流れを確認しましょう。
※ 必ずしも人材紹介業を開始するための許可証を受領できるわけではありません。申請書類などに不備がある場合や審査の要件を満たさない場合には不許可となります。
③の講習会は、労働関係法令、職業紹介事業の適正な運営等を行うための理解を深めて、適正な職業紹介を行うことを目的として実施されています。
⑤の申請は、主たる事務所の所在地を管轄する都道府県労働局を経由して厚生労働大臣に提出する必要があります。
また⑤の紹介事業の許可申請から⑥の許可証の受領までは概ね2か月~3か月かかることが通常です。
人材紹介事業の申請で許可を得るための6つの必須要件
人材紹介業を開始するためには許可が必要なことは上のフロー図の通りですが、その許可を得るためには一定の要件を満たしている必要があります。
要件を充たさなければ、人材紹介業を開始するための許可を得るのは難しいでしょう。
ここでは人材紹介業を開始するために、必ず知っておきたい6つの要件について説明します。
1.個人情報管理に関する要件
人材紹介業で許可を得るためには、個人情報の管理体制を整えることが要件の1つになりますが、ポイントは次の点です。
2.代表者や役員の要件
紹介業を営む代表者や法人の役員は、どなたでも良いわけではありません。
例えば、住所や居所が一定しないなど生活の拠点が安定していなかったり、道徳上有害な業務に就かせる行為を行う恐れがあるなど欠格事由に該当せず、その他適正な業務を期待できない者ではないことといった要件を満たすことは紹介業の許可を得るためには必須の要件となります。
3.職業紹介責任者に関する要件
人材紹介業を開始するためには、職業紹介責任者を定める必要がありますが、その責任者は次の要件を満たす必要があります。
4.事業所に関する要件
事業所に関する要件でのポイントは次の3点です。
例えば、個室の設置、パーティション等での区分により、プライバシーを保護しつつ求職者の対応することが可能な構造となっていること。
ただし、この点については次の(a)又は(b)のいずれかによっても、上の要件を満たしているものと認められます。
(a) 予約制、近隣の貸部屋の確保等により、他の求人者又は求職者等と同室にならずに対面の職業紹介を行うことができるような措置を講じること。
(b) 専らインターネットを利用すること等により、対面を伴わない職業紹介を行うこと。
5.適切な事業運営に関する要件
適切な事業運営をすることは、人材紹介業で許可を得るために大切な要件の1つですが、その要件を満たすためには次の点がポイントになります。
6.資産要件
資産要件については、この後に具体例を使ってお伝えします。
以上の6つについては、人材紹介業の許可を受けるために必須となりますので必ず要件を満たすよう準備するようにしましょう。
人材紹介業(職業紹介業)の許可を申請する場合に必要となる書類
次に厚生労働省に職業紹介(人材紹介)事業の許可を申請する際の提出書類※について説明します。
※ 国外においても職業紹介をする際に必要な提出書類は除く
申請者が法人の場合と、個人の場合で提出書類が若干異なりますので注意が必要です。
法人と個人事業主に共通する提出書類 |
1. 有料職業紹介事業許可申請書 |
2. 有料職業紹介事業計画書 |
3. 届出制手数料届出書 |
4. 代表者、役員、職業紹介責任者に関する書類 ・住民票の写し(番号法第2条の規定に基づく個人番号の記載のないものであり、本籍地の記載のあるものに限る。) ・履歴書 ・代表者役員の法定代理人の住民票の写し及び履歴書 ・職業紹介責任者講習会受講証明書の写し |
5. 資産及び資金に関する書類 ※ ・最近の事業年度における貸借対照表及び損益計算書 ・最近の事業年度における確定申告書の写し ・最近の事業年度における法人税又は所得税の納税証明書※ 監査証明書が必要になることがあります(詳しくは後述) |
6. 個人情報の適正管理に関する書類 ・個人情報の適正管理及び秘密の保持に関する規程(以下「個人情報適正管理規程」という。) |
7. 業務の運営に関する書類 ・業務の運営に関する規程 |
8. 事業所施設に関する書類 ・建物の登記事項証明書(申請者が所有している場合) ・建物の賃貸借又は使用貸借契約書(借りている場合) |
9. 手数料に関する書類 ・手数料表(届出制手数料の届出をする場合) |
法人に特有の提出書類 |
1. 定款または寄付行為 |
2. 登記事項証明書(法人の登記簿謄本) |
3. 最近の事業年度における株主資本等変動計算書 |
個人に特有の提出書類 |
1. 預貯金の残高証明書等所有している資産の額を証明する書類 |
2. 所有している資金の額を証明する預貯金の残高証明書 |
人材紹介業の許可を申請する際の費用(実費)
実際に人材紹介事業開始の許可を得るためには次のような実費が発生します。
5万円+1万8千円×(職業紹介事業を行う事業所の数-1)
9万円
新たに人材紹介事業を開始するときに必要な監査証明発行の要件
会社側が人材紹介事業を開始しようと考えても、すべての会社が人材紹介ビジネスができるわけではないことは既にお伝えした通りです。
人材紹介事業を開始するには、次のような資産要件を充たす必要があります。
新たに人材紹介事業を開始する場合の資産要件
- 基準資産額:500万円以上
- 現金預金額:150万円以上
※ 基準資産額とは、資産(繰延資産及び営業権を除く)の総額から負債の総額を控除した額のこと
(繰り返しますが)直近の決算で資産要件を充たしていれば公認会計士による監査証明は不要なのですが、満たしていなければ増資等をすることで資産要件を充たしたうえで、監査証明を得る必要があります。
資産要件を満たさず人材紹介事業の許可申請をしてしまい、厚労省側に監査証明の添付漏れを指摘されるケース(差戻し)が多くありますので、事業者側は注意したいところです。
資産要件の具体的あてはめ
ここでは、上でお伝えした資産要件について具体的にあてはめて説明します。
※ 資産要件については、基準資産額500万円以上、現金預金150万以上となりますので、この要件について確認します。
基準資産額の要件
簡略B/Sの資産の部の合計(2)から負債の部の合計(3)を差し引いた基準資産額は700万円であり、500万円以上ありますので基準資産額の要件を満たしています。
現金預金の要件
現金預金も200万円(1)ありますので、現金預金150万円以上という現金預金の要件を満たしています。
ですので、この簡略B/Sは人材紹介業で求められている資産要件をすべて満たすことになります。
まとめ:人材紹介業の許可申請にあたって
以上ここまで人材紹介業を開始するにあたっての要点について解説しました。
人材紹介業を開始しようと考えても、すべての会社が開始できるわけではなく、要件を充たさなければ人材紹介業を開始するのは難しくなります。
人材紹介業の許可申請をする際には、例えば既に解説した資産要件など、申請の前提として様々な要件を充たしているか否かを確認することは必須です。
迅速に人材紹介業の許可を得るためにも、必要書類に不備がないかどうか、資産要件を満たしているか、監査証明が必要か否か等、事前に確認することをお勧めします。