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職業紹介等の許可申請の際に監査証明が発行できない場合とは?

職業紹介・労働者派遣事業における許可の申請をする際は、監査証明書が必要になる場合があることは本サイトでも既にお伝えしている通りです。

しかし形式的には資産要件を満たしていたとしても、監査を実施した結果、実質的には資産要件を満たしていないと判明することがあります。

このような場合には監査証明を発行できないことになりますので注意が必要です。

それではどのような場合に、実質的に資産要件を満たさないことになるのか?具体例を使って説明してみます。

新規に労働者派遣事業を開始する場合の資産要件

資産要件
  • 基準資産額:2,000万円以上
  • 現金預金額:1,500万円以上
  • 資産額が負債総額の1/7以上

新規に職業紹介事業を開始する場合の資産要件

資産要件
  • 基準資産額:500万円以上
  • 現金預金額:150万円以上

※ 基準資産額=資産額-負債額

職業紹介等の許可申請において資産要件を満たさず監査証明を発行できないケースは?

形式的には資産要件を満たしていたとしても、監査を実施した結果、実質的に資産要件を満たしていないと判明するケースとしては、例えば、次のようなことが考えられます。

※ 形式的には資産要件を満たしていても、監査を実施した結果、実質的には資産要件を満たさない場合には監査証明は発行できなくなることがあるので注意が必要です。

1.長期間にわたって未回収の売上債権がある場合

数期間にわたる決算書を確認すると、同じ相手(会社など)に対して、全く同一金額の売掛金や未収金が計上されてることがあります。数期間にわたって同一相手に対して同一金額の売上債権が計上されている場合は、回収可能性が非常に厳しいと考えられるので、貸倒引当金を計上するか、または売上債権の貸倒処理をする必要性が高くなります。貸倒引当金や、貸倒損失処理をした結果、資産要件を満たさなくなることがあります。

2.減価償却不足がある場合

中小企業によくみられるのですが、本来計上すべき減価償却費を計上せず、過小な減価償却費を計上していることがあります。

過小な減価償却費を計上する理由は、融資等の審査のためです。減価償却費を過小に計上し、損失ではなく、利益を計上した方が融資等の審査上は有利になるからです。

減価償却不足がある場合、資産が過大に計上され、形式的には職業紹介等の許可に必要な資産要件を満たしているように見えてしまいます。

しかし監査を実施した結果、減価償却不足が判明し、固定資産を適切な簿価に修正すると、資産要件を満たさないと判明することがあります。

3.簿外負債が発覚した場合

簿外負債が発覚した場合にも、結果として資産要件を満たさなくなることがあります。

簿外負債とは、例えば、取引先からの請求の計上漏れ、源泉税など預り金の計上漏れが典型例と言えます。

こうした簿外負債がある場合には、資産要件を満たさなくなることがあります。

4.減損の必要性がある場合

固定資産に減損の必要がある場合にも、資産要件を満たさず、監査証明を発行できなくなるリスクがあります。

ここでまずは不動産を例に減損について、簡単に説明します。

都内にある不動産を2000で購入しました。購入時には、将来この不動産から得られる家賃などの収入は2500と見込んでいたとします。

しかし、購入から1年後、リーマンショックのような世界的な事件による不動産価格下落の影響によって、将来にわたってこの不動産から得られる収入は1300になりました。

つまり、見込んでいた収入が得られなくなり、しかも投資した金額2000よりも低くなったことになります。

この際の減損金額は

700=購入金額2000-将来収益1300

になります(減損=700)。

購入した金額よりも、将来得られる収益が1300しかないので、700の損失が生じることになります。

そしてこの減損700はPL上の特別損失に計上されます(この場合、不動産の簿価は2000ではなく1300になります)。

※ B/Sに計上されている不動産(固定資産)の簿価を700減額し、P/Lに特別損失として700計上することになります。

このように固定資産に減損の必要がある場合にも、職業紹介事業等の許可申請の場面で求められている資産要件を満たさなくなることがあります。

5.帳簿がない場合

会計士等の専門家であれば帳簿がなければ監査はできないことは熟知していますが、経営者のなかには、帳簿がなくても監査証明を受領できると考えている方も、なかにはいらっしゃるかもしれません。

監査業務は、帳簿を基に実施します。したがって帳簿がなければ、監査は実施できず、監査証明も発行できないことになります。

まとめ 職業紹介等の許可申請の際に監査証明を発行できないケースの具体例

最後に、職業紹介等の許可申請の際に監査証明を発行できないケース(具体例)についておさらいします。

具体例
1.長期にわたって未回収の売上債権がある場合
2.減価償却不足がある場合
3.簿外負債がある場合
4.固定資産の減損の必要性がある場合
5.帳簿がない場合

1から5のような状況にある場合、常に監査証明を発行できないというわけではありませんが、1から5のような事実が判明した結果、資産要件を満たさなくなった場合には監査証明は発行できなくなります。

※ 繰り返しになりますが、形式的には資産要件を満たしていても、監査を実施した結果、実質的には資産要件を満たさない場合には監査証明は発行できなくなることがあるので注意が必要です。

実質的に資産要件を満たしていなかった場合には、増資等を実施し、資産要件を満たすような対策を施すことが考えられます。

人材紹介・派遣事業の許可申請の際に監査できない人は?